特別授業 鳥の孵化の瞬間

私の通った小学校は、理科教育に力を入れている学校で、実験や実習をたくさんやりました。

それが面白くて、私は理科が大好きでした。

その学校で、授業ではなく、個人的にさせてもらった実験の話しをします。

ある年の春、クラスの友達の家の雨戸の戸袋の中になにか鳥が巣を作って卵を産んでしまいました。

孵化してしまうと大変だからと、その子のお母さんが卵を取り出したのですが、捨てることもためらわれて、友達が学校に持ってきました。

学校には、孵卵器という、卵を温めて孵化させる機械があります。先生と相談して、それに入れて、毎日観察することになりました。

私は動物が好きなので、志願して観察に混ぜてもらうことにしました。

電球の光をあてて、卵を一個一個観察するのですが、ある日黄身の上の血管を発見!育っていることを実感します。

そして徐々に卵の中身は小さなヒナの形になって、孵化の日を心待ちにするようになります。

毎日毎日、わくわくしながら卵を見に行って、いよいよ、割れた卵を発見、孵化の始まりです。

生まれる瞬間は、教室にいた生徒みんなで見ました。がんばって、早く出ておいで、とみんな応援します。

そして一羽孵り、二羽孵りし、そのたび拍手が起きました。誕生の瞬間というのは、なんであれ感動するものです。

特にまだ経験の少ない子供にとっては、忘れられない時間になったと思います。

その後、先生はその鳥の孵化について、特別授業をしました。

卵というのがどういうものかから始まって、私たちが観察した卵の中の変化に触れ、そして孵化することを、子供にわかるように説明してくれました。

人間と鳥の子どもの産み方の違いについても話してくれました。

そういう話しを聞いて、私たちは生まれた鳥に愛情や親近感を持ちました。

その学校には小さな動物園があって、ヤギやタヌキやニワトリ、ウサギなどを飼っていたので、孵ったヒナは、育ててそこで飼うことになりました。

これは、とても贅沢な生物の授業だったと思います。

特に孵化の瞬間が見られたのが、忘れられません。

命というものについて深く考えるという、生物の授業の大きな課題をみごとに投げかけた時間でした。

知識、というのは生きていく上で必要なものですが、単に本やネットから仕入れただけの知識と、経験に裏打ちされた知識では、その重さに大きな違いがあります。

卵から命ができて生まれてくるということを、経験として教えてもらえたことには、本当に感謝しています。

命、というのは、学校で一番教えなければいけなくて、でも教えるのが難しいことだと思うので、あの授業はよかったなあ、とつくづく思うのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

高橋 凌峰

1986年12月1日生まれ。現在29歳。東北学院大学言語文化学科卒業。高校在籍時にNZ留学の経験もあるので英語が得意。海外がとにかく大好き。今まで言った国は7か国。現在は櫻學舎のメディア担当として活動。